「今日の夕焼けはどうでしょうか?」
大河を前に、夕焼け空を待ち続けていたときのこと。
裏山の小さな栗林で落ちている栗を拾う老婆に、今の気持ちを打ち解けるように、話しかけてみた。
「はぁ、きょうはどうやろねぇ。だめじゃなかろかねぇ」
老婆は、手を腰に当てながら、ゆっくりと空を仰いだ。
「そうですかぁ。こればっかりは、どうしようもないですもんね」
「そうやねぇ」
そとあと、しばらくいろんな話をしているうちに、いよいよ時間となってきた。
老婆は、
「では、」
と軽く会釈をすると、家路へと向った。
肩に重い荷を背負い、杖をついて路肩を行く。
ゆっくりゆっくりと小さくなっていく後ろ姿を、つい最後まで見送っていたい気持ちになる。
(さ、私は撮影の再開だ)
視線を川に向けると、眼前の光景は、いつのまにか夕暮れの匂いで一杯になっていた。
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